2013/12/26

カップ酒を楽しもう!(2)菊水の話



酒呑み比べ カップ酒の呑み比べ(後編)

最近、小さな酒蔵が、おしゃれなカップでカップ酒を出して再びブームになっている。

呑み比べたカップ酒の、皇国晴酒造の「豪華生一本」は、その先駆的存在。シンプルで、花模様以外は酒銘も、蔵名も書かれていない。呑み終わったら、花瓶になるような秀逸なデザインだ。CMで有名になった「生一本」のカップ酒。

皇国晴酒造は1887年創業の、富山の酒蔵。創業時の蔵名は岩瀬酒造。名水百選のひとつが、しかも軟水と硬水のふたつが蔵内に湧き出ている全国唯一の、恵まれた酒蔵だ。1984年に作られた「幻の瀧」で、「生一本」はセカンドブランドになったが、伝統を重んじた清酒を作り続けている。

その真逆にあるのは「ふなぐち菊水一番しぼり」だ。「大関」や「豪華生一本」の洗練なデザインと真逆の、ちょっと…なデザイン。だが、酒好きにとって有名なカップ酒だ。

「ふなぐち菊水一番しぼり」はガラス製ではなく、アルミ製のカップ酒。缶に、そのワケが書かれている。

今はあたりまえのように生酒が売られているが、生酒は熱処理(火入れ)しないと腐敗、劣化する。昔の技術で生酒を売るのはできなかった。だが、試行錯誤のすえにアルミ缶によってできた。つまり菊水酒造は、40年前の1972年に、カップ酒で生酒を出した唯一の酒蔵だ。加水調整もしてないので、19度。

醪を酒と酒粕に分けるための酒槽から出る原酒を、菊水酒造は「ふなぐち」と呼んだ。また、キリンビールは「一番搾り」を出す際に、酒銘使用の挨拶があったという。「ふなぐち菊水一番しぼり」という長い酒銘に込められたのは。

「ふなぐち菊水一番しぼり」は、缶内熟成によって半年でブランデーのような味わい、1年で中国の老酒のような味わいになるという。熟成が待てない人は、1年熟成の「熟成ふなぐち菊水一番しぼり」を。新米で作った秋季限定発売の「新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり」、醸造アルコールを使わないで、かすとり焼酎を使った米のみの原料の「薫香ふなぐち菊水一番しぼり」もある。

菊水酒造は1881年創業の、新潟の酒蔵。皇国晴酒造と違って、伝統にとらわれないで、技術開発、合理主義で、新しい清酒を作り続けている。過去、いくども存続危機に遭ってきたからかもしれない。存続危機を、酒蔵一体となって乗り切った想いが、酒銘に込められている。

酒蔵によって考え方、拘り方が違うのは当然。だが、ふたつの酒蔵の社訓は、偶然に「呑む人のために良い酒を造る」と。一升瓶は買うのもたいへんだ。カップ酒で、ふたつの酒蔵の違いを、ぜひ、味わってほしい。

呑み比べたカップ酒
金冠ワンカップ・大関
白鶴ペーパーカップ・白鶴酒造
豪華生一本・皇国晴酒造
酔心・酔心山根本店
開運祝酒・土井酒造場
八海山・八海醸造
奥の松・奥の松酒造
ふなぐち菊水一番しぼり・菊水酒造
賀茂鶴純米酒・賀茂鶴酒造
羽陽辯天・後藤酒造店

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