2013/12/09

日本酒・奥の松酒造(福島)+全米の話



酒呑み比べ 福島・奥の松酒造+全米の話

メジャーの銘柄になればなるほど、万人に受けなければならない。「日本酒はこういうものだ」という、日本酒に対する肯定的な、また、否定的なイメージはあるが、少なくても「旨い」と思わなければ、次に呑まなくなる。

そういう現状で、酒蔵は新しいタイプの日本酒を作ったり、一方で、伝統どおりの日本酒を作り続けたり、日々研鑽を怠らない。

奥の松酒造という酒蔵がある。銘柄は蔵名のとおり「奥の松」。有名な銘柄だ。コンビニでも見かける。地元「奥州」と「二本松」にちなんだ蔵名。創業は1716年。約300年も守り続けた伝統と技術によって有名になった銘柄だ。

全米吟醸酒という「奥の松」がある。純米吟醸酒ではない。

昔は、日本酒は米だけで作っていたが、米だけで作ると腐造の危険も多く、その回避のために米焼酎やかすとり焼酎を加えるようになった。だが、今は技術の向上で加えなくても腐造を防げるようになった。

焼酎を加えるのは腐造回避のためだったが、戦後の米不足から一時期日本酒の嵩を増やすために醸造アルコールを加えた三倍増醸清酒がでてきて、「醸造アルコールを加えた日本酒は旨くない」という否定的なイメージが広がった。その後に合成清酒もでてきて、ますますと日本酒の否定的なイメージが広がった。そういう日本酒が主流を占める時期が長く続いたために、本来の、米だけで作った純米酒が反って新しいイメージとなって、今の純米酒ブームとなる。

全米吟醸酒とは、自社の純米酒から作った米焼酎を加えた、全てが米で作った吟醸酒ということ。そういうことなら昔の米焼酎を加えて作った日本酒は全米酒といえる。だが、なぜ、手間をかけて純米吟醸酒ではなくて全米吟醸酒を作るのか。

昔の日本酒は甘口が多く、香味を付ける、味を締める(辛口にする)ために、米焼酎を加えていた。つまり全米吟醸酒は、伝統どおりに作った日本酒だ。

呑み比べた3本
奥の松サクサク辛口・本醸造
Alc:15・酒度:+2・精米歩合:65%(?)
奥の松 全米吟醸
Alc:15・酒度:+5・精米歩合:60%(?)
奥の松 純米吟醸
Alc:15・酒度:+1・精米歩合:58%(?)

全米吟醸酒は、純米吟醸酒より重く、辛く、呑んだ後に、すっと抜けるかんじ。「キレ」とはちょっと違う。今の純米酒に呑み慣れると、昔の日本酒というかんじ。このへんは好き嫌いはあるかも。ちなみに吟醸は精米歩合60&以下ということで、醸造アルコールが入った本醸造酒も精米歩合が60%以下なので「吟醸酒」となる。

注記
かすとり焼酎:日本酒の酒粕で作った焼酎。「粕取り」が語源。ちょっとクセがある。戦後の「カストリ焼酎」は「酒粕で作った粗悪な密造焼酎」。まったく違うので。

醸造アルコール:食用エタノール(酒精)。主に糖蜜(サトウキビ)、他にサツマイモ、トウモロコシなどを発酵、蒸留したもの。36度未満は甲類焼酎、ホワイトリカーとして売られている。

三倍増醸清酒:戦後の米不足から、醸造アルコールや色々なものを混ぜて薄めて作った日本酒。醸造アルコールといっても原料はわからない。3倍くらいになるのでこう呼ぶ。

合成清酒:醸造アルコールに色々なものを混ぜて作った日本酒もどき。実はまだ作られている。いわゆる「みりん」だ。正しくは「みりん風調味料」だ。ややこしい。「本みりん」は日本酒の作る時にできるかすとり焼酎で作られる。

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